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海老原 健一; 鈴土 知明
Metals, 12(4), p.662_1 - 662_10, 2022/04
被引用回数:2 パーセンタイル:30.25(Materials Science, Multidisciplinary)鉄鋼中のリン原子は、熱や照射の効果によって粒界に集まり粒界脆化を引き起こす。そのため、さまざまな温度及び照射条件での粒界におけるリン偏析の数値的予測は、脆化の防止に対して重要である。鉄における粒界リン偏析のモデルを開発するため、本研究では、2種類の対称傾角粒界(3[1-10](111), 5[100](0-13)粒界)におけるリン原子の移動を分子動力学シミュレーションを使って考察した。その結果、3[1-10](111)粒界では、リン原子は主に格子間原子状態で三次元的に移動し、5[100](0-13)粒界では、主に空孔との位置交換で一次元的に移動することが分かった。さらに、リン原子及び空孔の粒界からのデトラップについても調査した。
海老原 健一; 鈴土 知明; 山口 正剛
Materials Transactions, 58(1), p.26 - 32, 2017/01
被引用回数:8 パーセンタイル:38.12(Materials Science, Multidisciplinary)原子炉圧力容器鋼における照射による粒界リン偏析を数値シミュレーションによって評価することを目指し、原子レベルの計算に基づく拡散レート方程式の開発を行っている。本研究では、第一原理計算で評価した格子間原子対の移動モデルおよび移動障壁エネルギーを用いたキネティックモンテカルロシミュレーションによって、鉄原子とリン原子の混合格子間原子対の拡散係数を評価した。評価した混合格子間原子対の拡散係数は、八面体格子間サイトを移動するリン原子の拡散係数とほぼ同じであり、空孔によるリン輸送の拡散係数よりかなり大きい値であった。さらに、八面体格子間サイトのリン原子を取り入れるように修正した拡散レート方程式に評価した拡散係数を組み入れ、照射誘起粒界リン偏析の数値シミュレーションをしたところ、八面体格子間サイトのリン原子に対する粒界における従来の境界条件が不適切であることが明らかとなった。今後、適切な境界条件を取り入れる必要がある。
海老原 健一; 鈴土 知明; 山口 正剛; 西山 裕孝
no journal, ,
リンによる粒界脆化は照射下での鉄鋼材料において大きな問題であることから、原子力構造材料の健全性を保つため、リン粒界偏析の評価予測が必要である。近年、第一原理計算で得られた障壁エネルギーを組み入れたキネティックモンテカルロから導出した、空孔がリンを引きずる空孔ドラッグ効果を含む部分拡散係数を組み入れた拡散レートモデルが、原子炉圧力容器鋼における照射誘起リン粒界偏析の評価に適用されている。空孔量は温度に影響されることから、本研究では、照射誘起リン粒界偏析の温度依存性をモデルによって評価した。結果として、既存のマクリーン拡散モデルが予測する高温領域におけるリン粒界偏析量の増加を、従来モデルは再現できなかったが、粒界におけるリンの捕獲及び放出過程を組み入れたモデルでは、高温領域におけるリン粒界偏析の増加を計算できることが分かった。このことから、温度依存性の評価には、従来組み入れられていなかった粒界でのリンの捕獲・放出過程が要因となっていることが明らかとなった。
海老原 健一; 鈴土 知明; 山口 正剛
no journal, ,
原子力構造材料では、熱や照射による溶質や不純物元素の拡散偏析により強度変化が起こるため、材料内元素の拡散偏析過程の適切な理解に基づく拡散偏析の評価・予測モデルが望まれる。特にリン(P)は粒界脆化を起こす元素の1つであることから照射誘起粒界P偏析のレート理論モデルが開発されている。モデルでは、第一原理計算に基づく空孔(V)及び鉄格子間原子(SIA)との相互作用によるP原子の移動機構が組込まれており、V機構については、キネティックモンテカルロ法で算出した拡散係数が用いられている。しかし、SIAによるP移動については、第一原理計算が見出した移動モデルの一部のみを用いて理論解析で算出した係数が使われている。本発表では、第一原理計算で見出されたSIAとPの相互作用の移動モデルを適切に考慮し、それに対する拡散係数をキネティックモンテカルロ法で評価し、V機構の係数と比較した。その結果、SIAとPの相互作用によるP拡散は、V機構のそれより早いことが分かり、SIAによるP拡散が無視できないことが明らかとなった。
海老原 健一; 鈴土 知明; 山口 正剛
no journal, ,
リンは原子炉圧力容器鋼において粒界脆化を引き起こし延性脆性転移温度の上昇に影響することが考えられる。このことから、照射誘起粒界リン偏析を解析するレート理論モデルを原子レベルの素過程を基に開発している。これまで、分子動力学シミュレーションによる考察に基づき、リンの粒界へのトラップ過程は組み込まれたが、デトラップ過程については従来のモデルを用いていた。そこで、本研究では、分子動力学よってリンの粒界内での移動をシミュレーションし、その挙動を考察した。さらに、その考察に基づき、デトラップ過程をレート理論モデルに組み入れ、照射誘起粒界リン偏析の温度依存性を計算した。その結果、リン原子は、粒界内を鉄原子の隙間を移動することが分かった。レート理論モデルの計算では600C以上になると粒界リン偏析量が大きく増加すること、そして、この増加はリンの粒界偏析エネルギーに依存することが示された。